人工蛹室を作ってみた

人工蛹室が必要な理由とは?

今回はオオクワガタのためのものとして人工蛹室を作っています。

蛹室は羽化するために必要なその個体の専用の部屋ということです。

 

オオクワガタに限らず、羽化できるような環境を先に作っておいてから蛹(さなぎ)になります。

蛹になってしまうと、あとは羽化するための動きしかできなくなります。

 

まず、エサ食べなくなります。

基本、上を向いて寝たままの状態になります。

あとは羽化の時期を待つだけという状態になるのですが、こうなると

もしも万が一、この蛹室の形が崩れようが、例えばなぜかしら水についてしまったり

他の害虫が近づいてくるようなことがあったとしても、

周りのマットやら菌糸やらにかみついたりして、崩れを修正するとか、

位置を変えるとかそういうことが一切できなくなる、ということです。

 

完全に本能のままの動きです。

もし自然界の中での出来事であれば

何もできることはないはずなのです。

しかし、飼育下なら話が違います。

 

時として自分の体に見合った蛹室が作れないことがあり

羽化の段階で必要な動きができなかったり、大あご起こすための動きができなくてそのままに

羽化してしまったりします。

実際に私はそうさせてしまったことがあります。

 

当然、その個体はまともに羽化できるはずがありません。

よくあるパターンとしては「羽パカ」と呼ばれる、羽がうまく閉じない状態で羽化することや

羽がうまく閉じていても、羽自体にヨジレのようなものができたりしてしまいます。

 

そういったことを事前に察知できれば、本来は自分で作らないといけないはずの蛹室を

飼育している者の手で作ってしまうことができるのです。

 

羽パカやディンプルがある場合、その多くが通常よりも寿命が短くなったり

販売目的で飼育されている場合などは、管理費用ばかりかかってしまったり、最悪の場合は「売れない」もしくは「激安価格」で処分販売する、しかなくなります。

 救える命は救ってあげましょうよ、というのが私の思う

人工蛹室を作る目的です。

 

人工蛹室を作ることになった個体

 

上記の画像をご覧ください。

このページのトップに載せたものの白黒画像です。

外から見ると、よくわからなかったのですが、まずは計測をしてみました。

外からメジャーを当てて、個体の大きさと蛹室のサイズとの関係に問題はないか?

 

見てみましたら、少し全長が足りないと判断しました。

しかしそれでもよくわからなかったので、もう人工蛹室を作る!と決め

掘りだしをして、しっかり確認してみました。

◆これは危険だなと思った理由(結論からいいますと、間違っています

蛹室の寸法が72㎜に対して、個体の全長は頭を下に向けている状態で51㎜。

羽化の行動で頭を起こすとすると、全長の半分以上はありそうなアゴ部分が少なめに計算しても

51㎜÷2=25.5㎜ 

つまり想定として51㎜+25.5㎜で全長73.5㎜の個体が出てくることになるのではないか?

 

クワガタ(画像はオオクワガタ)は下に向けているアゴを最終的には上に向けます。

蛹の現状のサイズと蛹室の大きさを見て、それでもなお、蛹室内でアゴを上に向けた時に

つっかえたりしないサイズかどうかを見極めます。

 

上記の画像上の説明のように、蛹室のサイズが小さすぎると私は判断しましたため

掘り出して、人工蛹室を作ることにしたのです。

大あごの長さが全長の半分に近いくらいの長さがあります。

羽化しようとするときの一瞬のことのためだけなのかもしれませんが

このままでは「長さ足りない」と思いました。

人工蛹室の種類

人工蛹室を作る方法は、いろんな方法があると言われます。

濡らしたティッシュで部屋(急場しのぎ)を作ったりトイレットペーパーの芯とティッシュを併用して作ったり、またはまさに飼育しているその菌糸瓶の中で、蛹室を作ってやったりすることもできますし

生け花のときに使われる「活花用給水スポンジ」と言われるものを使ったりします。

ここではこれを使って作る方法をお伝えします。

 

活花用給水スポンジ「オアシス」

本来は生け花などに使われている素材です

この素材を使えばクワガタを羽化させるための場所である蛹室を人工的に作るのには

とても適していると思います。

実際に触ればわかりますが、ゴムとかスポンジとかというものとは全然違います。

一応の完成形

これをこんな風に、蛹室に似せた形にするために、削ったり指で押さえたりして

作ります。

私の場合は、最初は縦の長さを測っておいて、その範囲を卵型に

スプーンで削ってから、全体を整えるようにしています。

スプーンでシャリシャリと軽く削れます。
人工蛹室を横から見たらこんな感じ

あくまで私のイメージです。

厳密にこういう形でできているのかどうかなどを確かめるために

せっかく作った蛹室を無駄にぶった切って調べたりしたことはありません。

他の人の説明では、何度位の角度で底を作るかまで書かれているものがありますが

私にはそういう風に角度を狙って作ることは、なかなか厳しいために

イメージで作っています。

それでもまだ一度も「羽化できなかった」ということがありませんので

皆さんもそれほど難しく考えることはないとは思いますが、こればかりは

自己責任でお願いします。

結果は?

これが、人工蛹室が完成して蛹をセットした画像です。

思ったよりも人工蛹室のサイズが大きくなりすぎてしまいました(笑)

本当は全長だけではなく横幅についても、大きければいいというものではありません。

「大は小を兼ねる」とかいう言葉がありますがここでは通用しません。

個体それぞれの大きさに合わせてある程度のサイズにしておかないと

蛹化の際に、その個体が動きたいように動ける状態ではない場合があり

結果として失敗することがあるようです。

「あるようです」というのは私は失敗したことがないためです。

 

人工蛹室に入れてから2週間経たないくらいの時期にこの状態になっているのを見つけました。

まだ皮が左の大あごのところに残っていますし、色もまだまだ赤いです。

他にわかることは、少なくとも羽は正常に閉じているようですし

全体的に見ても、変なヨジレやねじれを確認できません。

成功と思います。(少なくともここまでは
 

 

まだもうしばらくこのままにしておきます。

色が真っ黒になったら、人工蛹室から取り出して、通常使っている飼育ケースに

移動させます。

たぶん、菌糸瓶そのままです。

あまり長い間、人工蛹室に入れていると、無意味に荒らしたりしてしまいます。

前に一度、長いこと入れたままにしたために、人工蛹室を荒らしまくられてしまったことがありました。

 

羽化の結果は?

羽化しまして、まだ腹側の色が少し赤っぽいのですが

もう危険ではなさそうなので計測してみました。

 

全長は56mmということで間違いないと思います。

 

上に載せています画像の自己の分析としては、この個体は73.5㎜と想定しました。

 

しかし実際は56㎜にしかなりませんでした。

羽化しようとするときの蛹室に必要な全長と実際の寸法に差がありすぎました。

 

ただ現段階では、大きい蛹室があったからうまくいったのか?

それともそもそもその寸法の羽化に対しては、十分だったからなのか?

まだよくわからないというのが実際のところです。

まとめ

今回は個体の作った蛹室のサイズが小さすぎるのではないか?という疑問から

人工蛹室を作ってみました。

人工蛹室自体は何度も作って、実際に使用した経験がありますので不安などはありませんでした。

 

が、実際の蛹室のサイズと、個体の全長とは、どこまでの大きさだから危険とか安全というところが

はっきりわからなかったことになります。

 

ここからはまだ私の空想の範囲を超えないことなのですが

●蛹はその姿から羽化する過程で表面の皮を一枚脱ぐ

                  → 少し全体の寸法が縮むことになる

●尻の部分の左右にある二つの出っ張りは、羽化したあとにはまったくその形は見られない

                  → そこだけでも1㎜以上短くなる。

                    もっと胸側に尻の先は来るのではないか

●蛹の全長51㎜のものが羽化で56㎜しかなかった。

                  → 変化は5㎜のプラスでしかなかった。

            起こすともっと長くなりそうな頭から胸をつなぐ部分は実際はそれほどでもない。

                    

                    

 

私は今回の人工蛹室を使った飼育は間違いだったとは思っていません。

少なくとも一つの個体が無事に羽化できたわけですから。

 私はすぐ手元に、いつでも使えるようにこの「オアシス」は持っています。

もしもの時のための対策はしておいてあげてください。

動画

 

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